ある決断

「お蔭さんでこの春元気で退職するよ。ありがとう!」 かれこれ30年前になろうか、彼が病院の帰りに来局。 「C型肝炎でインターフェロンも50%しか効かないしやりたくもない。 会社も定年までやりたいし、百姓もしなくてはいけない。 小さな子供たちが一人前になるまでは死ねない。」 絶対的自信なんかあろうはずはないが、あまりに真剣に懇願する姿に押し切られて精一杯やってみると言った事がまるで昨日出来事ようだ。 漢方薬だけで何とかなるんだろうか? 奥さんをはじめ周囲の人たちの当然の心配をどう説得してきたのだろうか? 一年でも多く仕事や百姓をしたい。 動けなくなっていない今を一日一日と重ねよう。 自分で決めさせて欲しいと願っていたようだ。 医者をはじめ多くの人のアドバイスも最終的には自分の判断だと。 たとえそれがどんな形であろうと、後悔しない生き方なのだ。 誰だって同じことをしているのだろうが、 彼の決断は揺るがない強さが人一倍あったのかもしれない。